可動堰計画の主な目的と必要性は、「治水」「利水」「環境」「橋の併設」の4点である。
まず治水については、 150年に1度の洪水を流すためには第十堰は障害物である。というのが主な理由である。だがこれは、建設省自身がシミュレーションをした結果、大きな疑問符がついてしまっ
た。1つはこの大洪水に対して、現在の堤防はまだ2メートルの余裕があるのがわかったこと。もう
1つは、過去の洪水の痕跡と比較対照してみたら、1メートルも高い、誤った予測水位が出ていたことである。第十堰240年の過去の事実に照らせば、よりはっきりとする。事実として、第十堰のた
めに堤防が決壊したことはない。吉野川に連続堤防ができて以降、一度も堤防決壊はないのである。
つまり第十堰を撤去すべき理由はない。むしろ撤去すれば、大幅な川底の低下という治水上の新たな
危険が起こる。
利水に関して建設省は、「徳島市や鳴門市などに新たな水道用水が必要」としているが、建設省自身は何のデータも把握しておらず、根拠がない。現在は、新たな水需要の要請はなく、それどころか、過大すぎた予測を下方修正し、循環利用にこそ力を注ぐべき時代であることを忘れてはならない。
「環境の向上」という目的は理解に苦しむ。川をせき止め、大量貯水する可動堰によって、環境が良くなった例があれば教えてほしいものだ。
最後に「道路橋を併設し、渋滞緩和をはかる」という目的。これは論外と言うべきだろう。渋滞緩和は大切だが、堰とは何の関係もなく併設するメリットはない。二つの異なる目的を持つ建造物を合体
することによって、危険性や維持の困難さが増すだけである。要するに、可動堰化の必要性はないの
である。むしろ大きな問題は、可動堰建設が持つさまざまな危険性の方であろう。治水面でも環境面でも可動堰は問題が多い。第十堰と比較しながら考えてみることにしよう。
注) 99年8月、建設省は上記事業目的から「利水」を取り除いた。しかし、「多目的ダム事業」ではなく「直轄治水事業」として、建設計画自体は今後も推進すると言う。目的のひとつがなくなったにも関わらず見直しを行わない、これもまた「始めに可動堰ありき」の姿勢をを示すものではないだろうか?