これに対し、ゲートで締め切り大量の水を溜める可動堰にとっては、「漏水」は一切許されない。そ して新たに生まれるダム湖は、アシ原も浅瀬もすべて飲み込み、富栄養化による水質悪化はここを水源とする徳島市の水道用水を劣悪化させる。そればかりか、底にたまったヘドロが下流に押し流されれば、河口に至る吉野川の生態系すべてに取り返しのつかない悪影響を及ぼすことになるだろう。 |
例えば建設省が0点と切り捨てる「斜め堰」。第十堰は川の蛇行に対し斜めに設置された2段の堰からなっているが、これは江戸、明治と時代を追って形作られてきたものである。洪水の流勢を巧みに分散し、せき上げを最小に押さえて堤防を守り、また斜めであるがゆえに下流の多様な環境も形作られている。見方を変えれば、治水利水環境に微妙なバランスを獲得してきたと評価できるものだ。 昨今、自然の変化に対し、その時代に応じた柔軟な対応ができる「柔構造」の考え方が評価されつつある。そして第十堰こそ、まさにそのモデルケースとなり得る。第十堰を守り生かすことが、環境の時代である21世紀には、最もふさわしい選択だといえるだろう。 可動堰はこれとは逆に、大量の資源とエネルギーを消費する複雑な巨大技術である。人為的操作によって洪水を処理するためリスクも大きく、老朽化すれば非常に危険となる。このため巨額の建設費がかかるばかりか、耐久性は短く、毎年高額の維持費が必要となり、結局可動堰は、将来世代にとっ て大きな負担を残すこととなるだろう。しかもこれによる治水効果は、堰の上流たった4〜5キロ メートル区間の水位を数十センチメートル下げ得るにすぎない.本当に治水を考えるならは、信頼度を高めるための堤防補強にこそ目を向けるべきである。 |